(※2023/4/8(土)に更新しました)
こんにちは!背徳太子です!
今回は日本を代表する海運会社である日本郵船が先日発表した中期経営計画を解説していきますよ!
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今回は”日本郵船”が新たに発表した中期経営計画の内容を解説していきます。
日本郵船が最新の中期経営計画を発表しました。
歴史的な海運市況の高騰の恩恵を享受して2期連続で史上最高益を達成することが確実視されており、株価は高騰、さらには株主還元策の強化として度重なる増配を行なったことで投資家さんの中でも大きな話題となっていますよね。
2月には2022年度3Q決算発表があり、コンテナ船市況が下落したことで従来の勢いを失ったことがわかりましたが、それでもなお、素晴らしい決算内容でしたね。
そんな大注目の日本郵船ですが、2026年度までの新たな中期経営計画を発表しました。
(※以下日本郵船の中期経営計画のスライドから抜粋していきます)
戦略の概要
それでは早速、日本郵船がリリースしているプレゼン資料から抜粋して内容を確認していきます。
まずは中期経営計画の概要からです。
中期経営計画の基本方針として、以下4つのポイントが挙げられています。
- “ESG”を中期経営計画の中核とする
- 成長分野での事業拡大に向けた積極的な投資戦略
- 2050年ネットゼロ達成に向けた脱炭素の取り組みを計画的に加速
- 人的資本との更なる充実とコーポレート基盤の強化
海運業界においても現代のビジネスでは避けては通ることのできない”ESG”の観点は最も重要視されており、中期経営計画の中核にすることを強調されています。
現在の一般的に用いられている商船は燃費の向上といった性能改善は進んでいるものの、自動車のように電動化が進んでいるわけでもなく、GHG排出を抑制可能な燃料を用いているわけでもありません。(最近ではアンモニアなどの代替燃料が検討されているようですが、実用化まではまだまだ時間がかかるでしょう。)
しかしながら、その他業界のように環境を意識しなければマーケットから評価されない状況になりつつあるため、当然ながらそれを意識した計画になると思います。
目標の達成のため、組織改革にも着手するようであり、新たにESG戦略本部を設置するようですね。
次に、日本郵船における各事業の目指すべき方向性は以下の通り掲げられていますので見ていきます。
各事業におけるポイントは以下の通りです。
- ライナー&ロジスティクス事業では、発展する市場とともに成長を追求するべく新興国の経済成長を取り込む
- 不定期専用船事業については、変化する市場の要望に対応できるよう、低・脱炭素化の中で優位性を確保
コロナ禍ではサプライチェーンの混乱などの影響により、コンテナ船やドライバルクを中心として海運市況が高騰し、その恩恵を享受することで大手海運各社は史上最高益を達成しました。
コンテナ船事業などを展開するライナー&ロジスティクス事業では、潜在的成長が見込まれる新興国マーケットを取り込むことで更なる事業の拡大を目指すこととされています。
これから人口の増加が予測され、経済成長が期待される新興国は当然ながらそれに伴い荷動きが増えるでしょうから、このマーケットへのリソースを注入することは非常に合理的な戦略のように見受けられますね。
一方で、コンテナ船市況はボラティリティが大きく、これが大きな事業リスクとして認識されています。
船舶の建造・運航には大きなコストがかかるため、事業を一社で行うにはあまりにもリスクが大きすぎます。
従って一般的に海運業界では他社と協業してアライアンスをくみ、顧客のニーズに応える体制を整えています。
コンテナ船市況のボラティリティに耐えうる体制を構築するには、アライアンスを組む他社との協力は不可欠となるので、この辺りはリスク低減のためにさらに検討を進める必要がありそうです。
また、ドライバルクなどの事業を行う不定期専用船事業では、脱炭素化や石油・石炭の需要が減退するなど変化する事業環境に対応することで優位性を発揮することを方針とされています。
スライドを読む限り、今後はコンテナ船事業では新たなマーケットが開拓され、そこに投資していくことで潜在的な成長を取り込むことが目指されていますが、ドライバルクなどの不定期専用船事業では、すでにマーケットが成熟しており、マーケット参加者の意向に沿った対応を徹底することで差別化を図ろうとしていることが読み取れます。
今後、海運業界ではGHGの排出に対し課税される制度設計が進んでいくことになります。
これにより、陳腐化した資産を持っていると競争優位性を発揮できず、マーケットから取り残されることが容易に想定されます。
従って、これに備えた資産の入れ替えや新燃料導入の取り組みはさらに進めていく必要があるでしょう。
既存事業の成長を実現するとともに、アンモニアなどの新エネルギー需要の高まりや船舶バリューチェーンの変化に合わせて生まれる新市場を開拓し、急成長する市場への新規参入を目指すとしています。
両利きの経営
各事業についてもう少し詳細を見ていきましょう。
まずは全体感についてまとめられているスライドをご紹介します。
図では 「市場・顧客」と「技術・サービス」の2軸をとって4つの象限を作り、それぞれケース別に取り組みを計画されていることが示されています。
例えば新規の「市場・顧客」に対して既存の「技術・サービス」を用いた取り組みとして、電気自動車の物流ソリューションを提供することや、再生可能エネルギーの輸送分野への参入を目指されているようです。
さらに、新規の「市場・顧客」・「技術・サービス」としては前述したアンモニアバリューチェーンの取り組みや宇宙関連事業の記載があります。
既存の事業の中でも「市場・顧客」や「技術・サービス」の観点からそれぞれ強化するとともに、新たな事業機会にも参入し、新規事業の創出にも挑戦する”両利きの経営”で企業価値を高めていることが掲げられているようですね。
それでは、ここから事業別に戦略・計画を確認していきます。
ライナー&ロジスティクス事業
まずはコンテナ船事業などを展開するライナーロジスティクス事業についてですが、今後もONEの筆頭株主として成長を支援しつつ、プレゼンスの維持を掲げています。
さらにはM&Aを積極的に活用した成長戦略を実行し、さらなる成長を目指されていますね。
繰り返しとなりますが、2021年度から2022年度までの史上最高益達成はコンテナ船事業を展開するONEの取り込み収益がかなりの割合を占めており、大きく貢献していました。
上記で紹介した通り、今後は新興国を中心とした人口増加は確度高く予測されており、物量はそれに比例して増加していくことが見込まれています。
リスクを低減しつつ、その潜在的な需要をどの程度取り込めるのかがキーポイントになりそうですね。
不定期専用船事業
続いてドライバルク事業などを展開する不定期専用船事業について、すでに安定した収益を確保できる体制が整っていましたが、これからは”脱炭素化”をテーマにさらなる投資を加速させていくことが掲げられています。
上記の通り、資産ポートフォリオの入れ替えなどによる最適化をはかり、陳腐化した資産などは見直す必要がありますから、これに対応する取り組みを進めることとしています。
また、ドライバルクサプライチェーン関連事業といった新規の事業領域にも進出し、既存事業の周辺分野にも取り組むことを示唆されていますね。
新規事業
最後に新規事業として、中核事業をペースにした新たな分野への進出を掲げられています。
一言で海運企業と言っても様々な事業があり、既存の事業を中心として各分野の取り組みを組み合わせることで新たな価値を創造することができます。
例えば日本郵船は当然ながら海上で荷物を運ぶ”モノ運び”屋さんですが、昨今の環境意識の高まりを受けて各企業も課題に直面していますが、解決手段として代替燃料が注目されています。
そのため、アンモニアや水素のバリューチェーンに参入することで、”モノ運び”屋さんとのシナジー効果を期待することができますよね。
二酸化炭素の回収や液化といった二酸化炭素バリューチェーンやゼロエミッション燃料として注目されています水素やアンモニアのバリューチェーンへの進出が記載されていますね。
さらにはその代替燃料とされる水素やアンモニア製造の分野に参入することも十分に考えられるでしょう。
既存の事業との関わりの大きい分野を中心に今後投資を加速することが期待されますね!
株主還元
やはり気になるのは配当などの株主還元策でしょう。こちらもスライドに沿って見ていきます。
事業投資方針
まずは日本郵船の事業投資方針はこちらです。
冒頭で「成長分野での事業拡大に向けた積極的な投資戦略」と掲げられていましたが、その戦略がこの図でわかりやすく表されていると思います。
日本郵船は2026年度までに総額で1.2兆円の投資を実施する計画を立てています。
まず最も資本を投下するのは中核事業である「LNG輸送船」事業と「ドライバルク船」事業となるようです。
LNGは石炭や石油のような化石燃料と比較するとGHG排出量の観点で非常に優良な資源であり、環境意識の高まりに伴いさらにその需要は高まることが想定されています。
LNG船事業だけでなんと3,000億円を振り分ける予定であり、割合的には全体の25%を占めますから、全社的にもかなり注力される事業であることがわかりますね。
さらに、上記でもご紹介した通り、ドライバルク船でも事業環境は変化しており、環境に配慮した船舶が求められているなど、市場の要望は今後も変化していくことが予測されています。
このような要望にもしっかり応えて需要を取り込めるように、投資をしっかりやっていくことを掲げていますね。
ドライバルク船事業では投資額は1,200億円となる想定で、LNG船事業には及ばないものの、かなり大きな資本を投下する計画を立てているようです。
また上記でもご紹介した通り、「新しい技術・サービス」に合計で4,600億円の投資を予定されています。
内訳としては船舶の脱炭素化で2,900億円、M&Aなどで1,400億円となっているようです。
金額を見てみても日本郵船が本気で”両利きの経営”を実践していく姿勢が感じ取れますよね。
株主還元方針
皆さんが最も関心のある「株主還元方針」についてです。
ポイントは以下の通りです。
- 23-24年度で2,000億円規模の自己株式取得を実施
- 配当性向は従来の25%から30%に向上
- 1株あたりの配当下限は100円に設定
まずは自己株式取得についてですが、23~24年度の間におよそ2,000億円と大規模に実施することを見込まれています。
自己株式取得に加え、配当による株主還元も実施する予定です。
従来は配当性向を25%に設定されていましたが、これを+5%の30%まで上昇させることを発表されています。
さらに配当額の下限を100円と設定され、株主還元の最低限のハードルを設定したことになります。
2022年度の年間配当額は510円でしたので、かなり規模が縮小する印象を持ちますが、元々の配当水準は10円前後でしたので、10倍程度まで成長させることができています。
上記でご紹介した通り、日本郵船は既存事業・新規事業ともに今後も大胆な投資を実行していく予定であり、それ相応にキャッシュが必要な状況です。
直近2年間は海運市況の歴史的な高騰の恩恵を享受し、キャッシュがかなり入ってきました。
これを有効活用することが日本郵船の成長を左右すると言っても過言ではありません。
もちろん株主還元を厚くすることを期待する一方で、しっかりと企業成長に向けた投資も行ってもらい、株価を上げてほしいですね!
キャッシュ・アロケーション
続いてキャッシュ・アロケーション計画について見ていきます。
2023~2026年度の間でキャッシュインは総額1兆6,300億円を見込んでおり、そのうち2,000億円の自己株式取得と2,300億円の配当で総額4,300億円を株主還元のために充当し、残りの1兆2,000億円は前述の通り既存事業の再投資と新規投資、さらにはM&A投資としてキャッシュを使う予定とされています。
また、余力があれば追加で株主還元をすることも示唆されており、業績によっては柔軟に対応されることが期待されますね。
財務計画見通し
最後に財務計画の見通しを確認しましょう。
中期経営計画の最終年度となる2026年度は経常利益2,700億円(うち、ONEは1,200億円)、当期純利益は2,400億円となる計画を立てられているようです。
海運市況が歴史的な高騰を記録する前の2020年度は経常利益が2,153億円、当期純利益は1,392億円でしたので、以前の水準は大きく上回る想定であることがわかりますね。
さいごに
今回は日本郵船がリリースした最新の中期経営計画について解説していきました。
最後にコロナ前からの株価推移を見てみましょう。
こちらは直近5年間の日本郵船の株価推移を示しています。
コロナ前は700円前後をつけていましたが、2021年から海運市況の高騰の影響を受けて一気に株価を上昇させ、一時は4,100円台まで一気に上昇することになりました。
およそ1年間で5~6倍と驚異的な成長を遂げた銘柄はなかなかなく、日本郵船をはじめとする海運銘柄は一気に注目を浴びることになりましたね。
海運業界は市況のボラティリティの大きさからこれまであまりリスクをとる人は少なかったのではないでしょうか。
コロナ禍で様々な要因が重なり一気に高騰したことで、過去最高益を計上、株主還元を強化したこともあり株価の上昇が起き、大きな注目を浴びた銘柄でした。
ここからは市況の変動により業績が大きく下にブレることなく安定的な業績を上げることができる、かつ市況次第ではアップサイドも狙うことが出来る企業になることができれば、さらに投資家からも評価されると思います。
上記の通り、積極的に投資を実行していくことが掲げられていますので、各種メディアによる報道もチェックしながら引き続き動向を追いかけていきたいと思います!
これからも皆さんの投資判断のサポートとなる情報を発信していきますので、宜しければご参考にしてください!
今回は以上となります。ご覧いただきありがとうございました。
背徳太子
ブログ1年目の駆け出しブロガーです。
社会人をスタートさせ2年半程度で資産1,000万円まで到達しました。
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