(※この記事は2023年2月3日(金)に更新しました。)
今回は本日決算を発表した日本郵船の3Q決算についてまとめていきます。
この時期は各企業が続々と決算を発表します。
私が大好きな高配当銘柄を中心に、注目企業をピックアップして内容をレビューしていきますので、ぜひ投資判断のヒントとしていただければ幸いです。
米国の歴史的なインフレやFRBの金融引き締め政策の実行、またそれに伴うリセッション懸念や、まだまだ終わりが見えないロシアによるウクライナ侵攻、原油をはじめとする資源価格の高騰など、事業環境は非常に複雑で先の見通しが困難な状況です。
それゆえに、注目企業の決算を確認することにより、正確な実態を把握することができますので、投資家にとっては大変重要な情報を得る機会となります。
本日レビューするのは人気高配当銘柄の”日本郵船”です。
先日決算を発表された同じく海運銘柄の商船三井についてもチェックしたい方はこちらからご覧ください。
(※当記事のスライドは日本郵船の決算発表資料から抜粋してます)
商船三井がFY22 3Q決算を発表
日本郵船が2月3日(金)に3Q(4月−12月累計)決算を発表しました。
具体的に決算内容を確認する前に、日本郵船の業績をざっくり振り返りましょう。
過去の業績
直近3年間の実績と2022年の予想(3Q決算発表前)は以下のとおりです。
売上高から当期純利益の段階損益を見ていくと、2021年度から急激に業績を伸ばしていることが確認できますね。
実際、2021年度は当期純利益1兆円超を達成し、史上最高益を達成しています!
なぜこれほどまでに業績を拡大させることができたのでしょうか。
主なポイントは以下の通りです。
- コロナ禍による巣篭もり需要が拡大し、海上の貨物需要が急増
- サプライチェーンの混乱により、各種船舶の供給力不足
- 航空需要の減退により、航空貨物の供給力が著しく低下
2020年に起きたパンデミックにより、一般企業に務める人たちはテレワークを開始するなどして、自宅で過ごす時間が増えましたよね。
それに伴い、自宅で過ごすためにモノを買う人が増え、いわゆる巣篭もり需要が拡大することになります。
物流のほとんどは海上輸送によって成り立っていると言っても過言ではありません。
何かモノを買おうとすると、海外から輸入するものが多いですが、そのためには貨物船などの船が必要となります。
当然、船の数には限りがありますので、すぐさま奪い合いの状況になります。
そういった背景から、船を使用する際に支払う料金は高騰し、商船三井といった海運会社にとって追い風の状況となりました。
また、パンデミックにより、港で作業するスタッフの数が足りなくなり、港湾作業に遅れが生じることがありました。
当然、少ない人数で、多くの貨物を捌く必要があるのですが、リソースには限界がありますので、その結果、次第に船が渋滞していってしまいました。
それにより、ただでさえ貨物需要の拡大により船の数が足りていないにも関わらず、さらに供給力が落ちてしまい、その需給の引き締めが要因で市況が高騰することになります。
また、最近ではようやく航空需要が回復してきていますが、パンデミック時には旅客需要が大きく減退しましたよね。
通常、私たちが乗る旅客機にも一定数の貨物を載せて運行するのですが、旅客がいなくなると、航空機自体が動きませんので、それが不可能になります。
それゆえに、モノを運ぶ手段が海上輸送のみとなり、上記の通り需給が引き締まっている状況に追い打ちをかけることになりました。
以上、主な要因を挙げましたが、さまざまな要因が重なったことで、海運市況が歴史的な高騰を見せ、日本郵船をはじめとする各海運会社が立て続けに好決算を発表しました。
主要セグメント別の売上高・経常利益の推移は以下のとおりです。
いずれのセグメントにおいても、2021年度からの市況高騰の恩恵を受け、増収・増益となっていることが確認できますが、やはり「定期船事業」セグメントに分類されるコンテナ船事業(含むONE)が突出していることが分かりますね!
前回の決算発表概要
次に、前回の2Q決算について簡単にまとめます。
まずは業績について、期初には当期純利益を9,600億円で設定されていましたが、上期の実績で7,060億円(進捗率は73.5%)を計上しました。
各セグメントの実績は下図のとおりです。(表の上段は売上高、下段は経常損益を表します)
表のうち、どのセグメントも非常に好調に推移していることが分かりますね。
その中でもやはり「定期船」セグメントは突出しており、そのうちの経常損益は前年同期比+2,600億円と大幅に上回る結果を残しています。
すでに市況のピークアウトを迎えているとは言え、引き続きコンテナ船の旺盛な貨物需要・賃率が上期後半まで持続したことを要因となっていました。
また、例年に比べ、2022年は円安が進行しましたよね。
海運業界は基本的にドル貨での商売となりますので、為替の影響も大きく貢献することになりました。
このような背景により、上期時点で期初の予想を達成する見込みが強まったことで、業績予測を上方修正することを発表されました。
当期純損益は+700億円の1兆300億円に設定され、2期連続の史上最高益を達成する目標を打ち立てています。
上期時点での純利益は7,060億円ですので、すでに進捗率は68.5%超の水準であり、これでもやや保守的のように見えますが、為替や海運市況の見通しは難しいため、仕方がなかったかもしれません。
また、1株あたりの期末配当金を期初予想+15円となる160円(年間配当金は510円)に増配することを発表しました。
これにより、当時の株価で配当利回りは19〜20%の水準になり、高配当銘柄の中でもダントツの利回りを誇る銘柄となり、多くの投資家からさらに注目されることになりました。
好調な業績をおさめているだけでなく、きちんと株主へ還元する施策を進められていますね。
以上、簡単に前回の2Q決算を振り返ると、非常に好調に進捗していることが確認され、さらには株主還元をかなり強化しており、ホルダーにとっては非常に満足のいく決算内容だったと思います。
さて、今回の3Q決算の内容はどうだったのでしょうか。詳しく見てみましょう!
決算概要
3Q決算の概要まとめ
日本郵船が発表したスライドを用いてご説明します。
以下ポイントをまとめます。
- 売上高は不定期専用船事業やライナー&ロジスティクス事業(定期船、航空輸送、物流)での高市況の恩恵を受け、2兆501億円(前年同期比+3,742億円)の増収
- 経常利益は定期船事業にて上期までの高市況に支えられたのに加え、不定期専用船事業にて好況を捉えた契約獲得等により1兆59億円(前年同期比+3,076億円)の増益
- 当期純利益は9,203億円で前年同期比+2,281億円の増益を達成し、通期業績予想に対する進捗率は89%まで到達
今回の決算ですでに当期純利益は9,203億円に到達し、前回上方修正した通期業績予想1兆300億円に対する進捗率は89%まで到達しました。
各セグメントごとの実績を見ていきましょう。(表の上段は売上高、下段は経常損益を示しています)
以下経常損益についてポイントをまとめます。
- 定期船事業と不定期専用船事業を合計すると、9,032億円となり全体に占める割合は89.7%
- 定期船事業は7,288億円と前年同期比+2,243億円(+44%)で増益
- 不定期専用船事業は1,744億円と前年同期比+805億円(+85%)で大幅の増益
日本郵船は主に5つのセグメントに分かれていますが、「定期船事業」と「不定期専用船事業」だけで約9割の経常利益を計上しています。
その中でも「定期船事業」はOcean Network Express社の持分を取り込んでおり、昨年度からの市況の高騰の恩恵を受けて大きく収益に貢献しています。
昨今注目されているコンテナ船事業ですが、港湾混雑の緩和(供給回復)や、世界経済の減速(需要減退)を受け、8月半ば以降輸送需要が減少、短期運賃市況が下落しました。
それにより、3Q(10~12月)は前年同期比減益となるも、9か月累計では前年比高値で成約した期間契約が利益貢献し、増益という結果になっています。
コンテナ船の市況については下図をご覧ください。
2018年度1Qの各航路総平均運賃を100とした場合の指数を表しています。
上期までは各航路で前年同期比プラスを維持していましたが、3Q(10-12月)では特に欧州往航で著しく下落し、前年同期比で減少しています。
累計で算出すると、平均を取ってまだまだ前年同期を上回ることができていますが、明らかにバブルが弾けたような推移を見せていますので、この先は市況悪化の影響が懸念されます。
また、「不定期専用船事業」は自動車輸送、ドライバルク事業、エネルギー事業で構成されており、今年度は自動車輸送における輸送台数の増加とドライバルクの好市況下での輸送契約獲得により前年度比で大幅な増益を達成しています。
さらに、前年度からの増減分析を図を用いて表すと以下のとおりです。
海運市況の変動+1,813億円に加え、円安により+1,299億円の影響がありました。
通期業績予想
今期の業績は海運市況や円安の影響により当期純利益が9,000億円を上回り、非常に好調に推移していることが確認できましたね!
この結果を受け、通期業績予想は下図のように修正しています。
当期純利益は前回までの1兆300億円から▲300億円となる1兆円と下方修正されています。
3Qまでに9,203億円を計上し、進捗率はすでに進捗率は89%でしたので上方修正されるかと思いきや、真逆の下方修正することになりました!!(マイナスの意味でサプライズです。。。)
セグメント別の業績は予想はこちらをご覧ください。(表の上段は売上高、下段は経常損益を示しています)
「定期船」では、やはりコンテナ船市況の悪化が著しく、運賃の改善と旧正月以降のに動きが回復するには一定の時間を要することが想定されていることから、4Qで利益の低下が見込まれており、その結果、経常損益は前回予想比▲480億円となる見込みです。
また、「航空輸送」では、例年ほどのピークシーズンの盛り上がりが見られなかった3Qに続き、荷動きの丁重による輸送スペースの需給緩和が想定されることから前回予想比▲100億円となっています。
コンテナ船事業の好況を主な要因として大幅な利益を計上してきた日本郵船ですが、そろそろ頭打ちの様相を呈してきたようにも見受けられますね。
配当
前回は期末配当の増配を発表した日本郵船ですが3Q発表において配当予想は据え置きとなりました。
本日までに決算を発表した大手海運会社はいずれも増配を発表している中、日本郵船は配当据え置きとなり、投資家からの評価も分かれることが予想されます。
これにより、期末の配当160円として本日の終値3,104円で計算すると、期末配当利回りは5.1%となりました。
日本郵船の配当権利落日は3月末ですので、残り2ヶ月で5.1%の利回りと考えると、現状でも非常に高利回りの銘柄であると言えます。
株価
最後に株価を見てみましょう。
2022年度における日本郵船の株価推移は以下の通りです。
年度はじめは3,700円台で推移していましたが、配当の権利落ち翌日には2,400円台まで一気に急落しましたが、その後は堅調に上昇、現在は再び上昇しているようなグラフになっていますね。
本日の決算発表後は上下に変動をしましたが、現在は始値▲1.93%の下落で取引を終えました。
まとめ
今回は3Q決算を発表した日本郵船について取り上げました。
為替の影響やコンテナ船、ドライバルク市況の恩恵を享受し、着実に業績を伸ばしてきており、当期純利益は業績予想の89%まで到達していました。
しかしながら、すでに市況がピークアウトしていることが確認されることから、収益の悪化が見込まれ、当期純利益は下方修正する結果となっています。
特に気になるのはコンテナ船市況の鈍化ですよね。
2021年度は史上最高益となる1兆円超を達成しましたが、このうちコンテナ船事業の取り込みが大きなウエイトを占めていました。
今期も上期までの市況の高騰を取り込み、1兆円を超えそうな勢いではありますが、来期以降は減収・減益、さらには減配することが容易に想定されます。
今から日本郵船をはじめとする海運株を購入すると、短期的には含み損を抱える可能性が高いと想像しますので、高配当銘柄とは言え、個人的にはなかなか手を出しづらいです。
尚、私は自身の投資方針(ご参考までに記事を以下に掲載します)に従い、基本的に長期目線で個別株を保有するようにしています。
海運会社は競合他社含め高配当銘柄ですので、引き続き市況動向などを追っていきたいと思います!
また、3Q決算については海運会社の他にも、三菱UFJや三井住友FGもレビューしています。
個人投資家からも人気の高配当銘柄となりますので、気になる方はリンクよりぜひご覧ください。
尚、普段は決算レビュー記事に加え、米国株の個別銘柄分析もしていますので、こちらもぜひどうぞ!
今回は以上となります。ご覧いただきありがとうございました
背徳太子
ブログ1年目の駆け出しブロガーです。
社会人をスタートさせ2年半程度で資産1,000万円まで到達しました。
本ブログでは、個別銘柄の分析、企業決算情報、経済ニュースなどを中心にして皆さんの投資判断の一助となるような情報発信をしています。
Twitterでも日々のニュースに対する所感や意見等つぶやいておりますので、ぜひご興味がございましたらフォロー下さい!
(参考記事はこちら)
コメント