【日銀総裁インタビュー】金融政策の変更はあるのか!?

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(※2023/5/26(金)に更新しました)

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背徳太子
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今回は日銀の植田総裁がインタビューを受けた内容について深掘りしていきますよ!

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今回は日銀の植田総裁が5月25日(木)に受けたインタビュー内容について取り上げていきます。

3月に前任の黒田氏が退任し、官僚ではなく日銀総裁として初の学者のバックグラウンドを持つ植田総裁が就任しました。

これほど日銀の総裁が世界から注目されているのは、インフレが起きてもなお変わらずに金融緩和政策を行なっていることです。これまでの日銀の金融政策については過去の記事で取り上げていますので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

参考記事:【日銀金融政策】黒田総裁下の金融政策を理解する!

世界の投資家からも注目されている植田総裁ですが、5月25日(木)には就任後初めてとなる各メディアからのインタビューを受けました。

今回はそのインタビュー内容について見ていき、発言内容から植田総裁の考えを見ていきます!

この記事を書いた人

背徳太子

JTCに勤務しながら米国公認会計士(USCPA)の資格を取得した投資ブロガーです。

米国インデックス・ETFや高配当銘柄への投資により新卒2年半で資産1,000万円を突破しました。
本ブログでは、個別銘柄の分析、企業決算情報などを中心にみなさんの投資判断の一助となるような情報発信をしています。

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インタビュー概要

日銀金融政策について

ここからは質問(Q)と回答(A)を具体的にみていきましょう。

Q:賃金や物価の見通しを踏まえ、金融政策は今後どの方向に向かうのか。年内に政策変更などの判断ができる可能性はあるのか。

A:当面の物価の見通しということで申し上げれば、ここからかなり高い確率でインフレ率は低下していくその後、反転してまた上がっていくという見通しを立てている。

その後半の部分についての自信が、前半部分についてほどはないということがまず1つの大きなポイントかと思う。

後半はそこそこ高い見通しにはなっているが、インフレ率で言えば、まだもう少し丁寧に見たいという判断だ。そのうえで、後半部分の見通しの確度が高まるのがいつになるかは、今後のデータ次第であり、基調的な物価の上昇率を規定するGDPギャップとか賃金の動向、それにインフレ期待などを丁寧に見て判断していくということだ

いきなり本題ですね。賃金や物価は金融政策へ直接的に影響を及ぼします。

まずは物価の見通しについてです。注目したい回答内容として、物価についてはここから「かなり高い確率でインフレ率は低下していく」と断言されている点です。

こちらは2019年4月を100とした場合の物価推移(CPI)を表したグラフです。

見ての通り、2021年4月までは下落基調となっていましたが、その後は一気に上昇していることがわかりますね。このトレンドは近い将来に高い確率で終わり、一度下落すると指摘しているのですね。

しかし、その後は「反転してまた上がっていく」と言いながらも、この部分の予測については前半ほど自信がない、つまり、現在のトレンドが転換し、インフレが落ち着くことは確度が高いとしつつもその後の動きについて確証がないとしています。

その後の物価動向を見ていく上で材料としてあげているのが「GDPギャップ」「賃金」「インフレ期待」としています。

ここで「GDPギャップ」という単語をあまり聞きなれない方も多いと思いますが、これは実際のGDPと潜在的なGDPの間の差を指します

潜在的な国内総生産とは、経済が完全雇用状態にあるときに達成されるであろう最大の生産水準を示しています。

つまり何が言いたいかというと、もしも世の中の人が全員雇用されている時に実現するGDPと、実際のGDPには当然ながら差分があり、それを「GDPギャップ」と呼んでいます。

これがなぜ重要なのか。例えば実際のGDPが潜在的なGDPよりも高い場合、差分のプラスのGDPギャップが存在し、経済が過熱している可能性があります。実際に数字をおいて考えてみるとイメージがしやすいでしょう。

もし潜在的GDPが100であるのに対し、実際のGDPが105だとします。理論的には潜在的GDPは完全雇用状態かにおけるGDP であるのにも関わらず、実際のGDPが上回っているわけです。これは明らかに異常事態ですよね。この時、一般的に経済が加熱状態にあると考えられるわけです。

一方、実際のGDPが潜在的なGDPよりも低い場合、マイナスのGDPギャップが存在し、経済が不況やデフレーション(物価下落)の影響を受けている可能性があります。

このGDPギャップを確認することで、実際の経済状態が分析できるというわけです。

さて、少し長くなりましたので、次の質疑を見てみましょう。

Q:日銀は先月、金融政策の先行きを示すフォワードガイダンスの中で、物価目標の実現に向けて、「賃金の上昇を伴う形で」という表現を付け加えた。日銀として、賃上げの持続性や広がりをどういう形で判断し、どう判断できれば、政策変更につながるのか。

A:賃金の動きの判断は、いろんな賃金統計を丁寧に見たり、あるいはその元になる労働需給に関するデータを見てみたり、支店等からのものも含めて、さまざまなヒアリング情報を活用したりして判断するということになるかと思う。

そのうえで、金融政策は、賃金そのものを目標にしているわけではない。持続的、安定的な2%の物価上昇という状態では、当然賃金も上がっているはずだということを今回、フォワードガイダンスに明示的に書いたということなので、あくまでも政策判断のポイントは、物価が持続的、安定的に上がっているかどうかというところの判断になる。

賃金と金融政策の関係についてですね。当然ながら賃金の上昇はインフレ要因となりますので、賃金動向は常にチェックしていることでしょう。

重要な発言内容としては、金融政策は賃金そのものを目標としているわけではなく、2%の物価上昇を持続・安定していく前提として賃金が上昇しているということですね。

明確に理解しておかなければならない基本的なこととして、日銀の使命は物価の安定に他なりません。あくまでも賃金は物価の上昇に伴い上昇していくものであり、日銀としては物価の安定的な上昇が最優先事項であることを改めて示したことになりますね。

Q:物価が持続的、安定的に上昇していると判断できれば、物価上昇が2%を下回る場合でも出口へ向かう可能性はあるのか。

A:2%をちょっと下回るくらいのところでも満足できるのかという質問だと思うが、そこの非常に細かいコンマいくつの差がものすごい重要というよりは、持続的、安定的かどうかということの判断のほうが重要になるというふうに考えている

これは質問の理解が難しいのですが(もう少しわかりやすい質問にしたら?と思ってしまいますが)、回答も見るに、「2%」という数字を絶対的な優先事項としているのかどうかということですかね。極端に言えば、「1.99%」の場合でも金融政策は変更されうるのか、という質問と理解しました。

回答としては「持続的、安定的かどうかということの判断の方が重要」とおっしゃっています。つまり、「2%」は絶対的な数字というわけではなく、2%に近い数字で安定的に推移することになれば、政策変更の可能性があるという趣旨ですね。

現在の金融緩和策が持続可能であるものとは総裁ご自身も認識しておられないようですので、2%の数字に届かなくても、安定的な物価上昇が確認されれば、早い段階で政策の変更はありうると考えて良さそうです。

アメリカの経済状況について

Q:急激な利上げによるアメリカ経済の減速のタイミングや深さをどう見ているか。それが、日銀の政策判断にどの程度影響するか。

A:後段から申し上げれば非常に重要な影響を及ぼすというふうに思っている。

アメリカ経済がどうなるかによって、世界経済も大きな影響を受けるし、それは日本の輸出に影響し、マーケットを通じての影響、コンフィデンス、センチメントを通じての影響も大きい。そのうえでアメリカ経済は、ひところに比べると成長率などは低下しているが、それでもかなり堅調に推移しているというのが実感だ。

ここからどう推移するかは、大きく分けて3つのパターンがあり得て、1つは、これまでの引き締めの効果がだんだんと出てきて、景気がもう少し減速し、インフレ率が期待するような経路で下がっていく

これはある種のソフトランディングで、その場合どこかから経済ももう少し持ち直して、高い成長につながっていくというケースだと思う。

これに対して2つのリスクシナリオがおそらくあって、1つは引き締めの効果が少し遅れ、それに伴って経済が大きく減速ないし不況に陥るケース

もう1つはかなり堅調な状態が続き、インフレ率が思ったほどは低下せず、高い金利の時期が長引いたり、少し先に行ってまたもう一段階の利上げがあり、その後またいろんなことが起こるというようなケースも考えられるかと思う。

さて、話題の中心がアメリカの経済へと移りました。非常にわかりやすい回答ですが、今後のアメリカ経済については3つのシナリオで整理されています。

①金融引き締め効果が出て景気は減速、インフレ率は期待通りに下落していく(=ソフトランディング)
②引き締めの効果が遅れ、経済が大きく減速し不況に陥る
③景気は持ち堪え、インフレ率が下がらず引き締め状態が継続、さらなる引き締め

現状は金融引き締め効果は一定でているものの、景気は底堅い印象をお持ちのようです。投資家としてはセオリー通りに①で進んで欲しいですが、こればっかりは将来のことを読むことはできません

デジタル通貨について

Q:中央銀行が発行するデジタル通貨、CBDCについてどう考えているか。アメリカで相次いだ銀行破綻の背景として指摘されているインターネットの金融サービスを通じた預金の取り付け、いわゆる「デジタル・バンク・ラン」はCBDCの議論に影響を与えるか。

A:CBDCについては、日本銀行としてはフィージビリティのチェックを継続して行っている段階ということだと思う。

それをさまざまな実験で確かめつつ、実験の環境をだんだん複雑あるいは現実に近いものにして、技術的な可能性がどこまであるか、チェックしつつ、進んでいるという段階かと思う。

そのうえで、今後何らかの形で導入するかどうかということについては、日本銀行だけでは当然決められなくて、国民的な議論の中で決まってくるものだと考えている。

最近の金融ストレスの問題の影響については、さまざまな場所で、この問題を議論すると、皆さん気にしている。CBDCを導入することによる技術的なプラスとともに現在の金融システムの安定性を脅かさない形で導入するという両方に気配りすることが必要だ。

金融政策だけでなく、注目されるトピックとしてCBDC(中央銀行が発行するデジタル通貨)についてもインタビューされていました。本題ではないのであまり触れませんが、面白いと思ったのは、CBDCについては日銀だけでは決められず、国民的な議論で決まってくると言い切っているところ。

あくまでも需要があれば導入に向けて精査していきますよ、というスタンスです。このスタンスを見る限りは日本国民の特徴を考えると、日本においてCBDCが導入されるのはかなり遅いでしょうね。

為替について

Q:日銀の金融緩和が当面継続するという見方もあって東京株式市場では日経平均株価が3万円台まで上昇している。その背景には円安もあると言われているが、今の為替水準についてどう受け止めているか。

A:為替レートの水準、あるいは影響に関する評価について具体的にコメントすることは差し控える。現状は円安だが、理屈上は、いろいろな主体を見ると、それぞれ違った影響を及ぼして、プラスの影響を受ける主体であったり、マイナスの影響が受ける主体であったりしてさまざまだ。

そういう中で、為替については、ファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが望ましい

2022年は「円安」のニュースを見ない日はなかったと言えるくらい話題になりましたよね。一時$=¥150まで到達した時には悲観的なニュースで溢れていました。日銀総裁の立場では具体的なコメントをすることは避けたものの、「プラスの影響を受ける主体」と「マイナスの影響を受ける主体」がいるとコメント。

海外で事業を展開している企業は円安の影響により史上最高益を記録するなど、明らかにプラスの影響を受けた主体でした。また、企業だけでなく、外貨建ての資産を保有している投資家は評価益がかなり膨らんだことでしょう。

私も少額ではありますが、ドル建ての資産がありますので、為替の影響により恩恵を受けた主体のうちの1人です。

一方で、外貨建ての資産を保有していない一般消費者にとっては商品価格の上昇をまともに受けるだけでメリットをほとんど感じなかったことでしょう。

そういった両面の立場があることから、日銀総裁の立場ではっきりと白黒つけることは避けたのだと思いますが、「為替については、ファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが望ましい」とされており、為替介入といったことは想定しづらい状況です。

生活の変化

Q:日銀総裁就任後、生活の変化はあるか。

A:学者のときであれば、例えば、神田にキャンパスがあったので、調べ物をしたいときに、本屋街に行って本を調べるなど、そういうことは自由にできたわけだが、それはなかなかできなくなったというような違いがある。

最後に普段の生活にいての質問。回答内容も総裁前後の変化を示すにはちょうど良いリアル感で思わず笑ってしまいました。

最後に:個別株投資は早期資産1,000万円達成の近道!

今回は日銀植田総裁のインタビューについて紹介しました。黒田前総裁の元で実施した「異次元の金融緩和」は結局2%の安定的な物価上昇を実現することなく、現在では緩和策による副作用について指摘するメディアや専門家も多いですよね。

注目された初回の金融政策決定会合では、当面の間は現政策を維持することが適切であると判断されており、即座の政策変更は判断されませんでしたが、植田総裁は節々に政策の変更の必要性について示唆しており、物価の動向次第では、近い将来の政策変更の可能性もあると思います。

金融政策の変更は当然ながら株価や為替に大きな影響を与えますので、投資家の皆さんは常に注意したいトピックだと思います。

私も植田総裁の一挙手一投足をチェックし発信してまいりますので、ぜひご参考にしてくださいね!

尚、最新の私のポートフォリオはこちらでご紹介しておりますので、ご興味があればこちらも合わせてご覧ください!

今回は以上となります。ご覧いただきありがとうございました。

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